TREATMENT

肝がん

対応可能な診療科

当院の診療(診断・治療)

肝臓は右上腹部にある体内最大の臓器です。栄養素の合成や有害物質の解毒といった重要な働きをする「からだの化学工場」です。肝がんは、肝臓そのものから発生する原発性肝がんと、他の臓器にできたがんが肝臓に転移してきた転移性肝がんがあります。転移性肝がんの治療は、もとの原発巣のがんの治療法に準じて行います。ここでは、原発性肝がんの治療について解説します。
原発性肝がんの約95%は肝細胞がんです。肝がんは、近年のがん統計では減少傾向にありますが、依然として年間約2万5千人もの方が肝がんで亡くなっています。肝がん患者さんの多くは、その背景に何らかの肝がんになりやすい原因(因子)をお持ちです。中でもB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性ウイルス性肝炎が多く、肝がんの原因の半数以上を占めます。そして、アルコールが原因の肝炎・肝硬変から生じた肝がんがこれに続きます。一方、近年では肝炎ウイルスもなく飲酒習慣もない方での肝がんが増加しています。こういった方は、肥満、脂肪肝、糖尿病を合併していることが多く、いわゆるメタボリックシンドロームと関連した「メタボ肝がん」として注目されるようになってきました。このような肝がんリスクのある方を適切にフォローして、肝がんを早期発見・早期治療していくことが大変重要になります。
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、ウイルス性肝炎や脂肪肝、肝がんがあってもほとんどの場合は無症状です。ですから、健康診断や他の病気の検査の際に肝機能異常や肝炎ウイルス感染を指摘されたときには、症状がなくとも必ず医療機関を受診してください。
 
1.当院の肝がん診療の特徴「チーム医療」
肝臓内科、肝臓外科、放射線科(カテーテル治療、放射線治療)の肝がん診療に関わる専門医が集まりカンファレンスを行っています。それぞれの患者さんに最適な治療を提供すべく密に連携をとりチーム医療を実践しています。また、がん薬物療法(抗がん剤治療)を行う際は、医師だけでなく看護師や薬剤師といったメディカルスタッフとともに安全で質の高い治療を受けていただけるようサポートします。
 
2.肝がんの治療
〇肝切除術:開腹手術および腹腔鏡下手術
〇局所療法:ラジオ波焼灼療法(RFA)
〇肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注化学療法(HAIC)
〇がん薬物療法:分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬
〇放射線療法:放射線治療、粒子線療法
〇肝移植
 
治療方針の決定には、がんの進行度にあわせて肝機能も考慮に入れる必要があります。肝機能が比較的良好な場合は、がんの個数、大きさによって推奨される治療法が異なってきます。がんの数1~3個、大きさが3cm以内ならば手術またはラジオ波焼灼術(RFA)が選択され、個数が1個ならば大きさに関わらず手術が最も有効な治療法といえます。がんの数が1~3個で大きさが3cm超ならば第一選択として手術、第二選択として肝動脈化学塞栓療法(TACE)が推奨されます。腫瘍数が4個以上ならば第一選択としてTACE、第二選択として肝動注化学療法(HAIC)またはがん薬物療法が推奨されます。手術では腫瘍の広がりと肝機能をあわせて最善の切除範囲が選択されます。一方、肝機能が悪い場合は治療の選択肢が限られ、緩和ケアが推奨される場合もあります。また癌の個数や大きさによって肝移植が検討されることもあります。原発性肝がんの約4%を占める肝内胆管がんでは単発でリンパ節転移のない場合が手術の最も良い適応です。切除不能の場合には抗がん剤治療が選択されます。
 
肝がんに対して様々な治療法がありますが、患者さんそれぞれのがんの進行度(ステージ)や肝臓の状態(肝予備能)をしっかりと評価したうえで治療法を選択します。当院では2011年より腹腔鏡下肝切除術を導入しており、よりからだへの負担が少ない治療に取り組んでいます。非手術治療の主体はRFAとTACEです。RFAは針状の電極を体外から肝臓の腫瘍に直接刺して、先端部に高周波で高熱を発生させてがんを焼き死滅させる治療です。当院では、事前に撮影したCT・MRI画像と超音波画像を関連付けた磁気ナビゲーションにより精度の高い局所治療を行っています。体外からの穿刺が難しい場合や肝機能が低下していて切除が難しい場合には、消化器内科・外科と協同で開腹下RFAや腹腔鏡下RFAに取り組んでいます。TACEは放射線科のカテーテル治療医が行います。血管造影を行いながらカテーテルをできるだけ肝がんの近くまで進めます。そして抗がん剤を注入し、がんに栄養を運ぶ血管を塞栓物質で塞いでがんへの血流を低下させます。どのくらいの範囲を治療するかはその場で肝臓内科医と協議し、患者さんの肝機能や全身状態をみて決めています。
 
近年、進行肝がんに対する薬物療法が大きく進歩しています。長年ソラフェニブとレゴラフェニブという2種類の分子標的治療薬しか使用できませんでしたが、2018年にレンバチニブが一次治療薬として承認され、2019年夏にラムシルマブ、2020年末にカボザンチニブが二次治療薬として登場しました。さらに、2020年秋に免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブと血管新生阻害薬であるベバシズマブの併用療法が保険認可され、進行肝がんの治療選択肢が増えてきました。これらのお薬を適切に使用することで、多発肝がんや転移のある肝がんにおいても予後の改善が期待されます。これらのお薬には特有の副作用が出現するため、当院では、患者さんにより安全に治療を継続していただけるよう、がんセンター医、看護師、薬剤師らで構成される副作用対策チームと診療科の主治医が密に連携を取って対応しています。
終わりになりますが、肝がんは再発が多いがんです。がんが一度治癒してもしばらくして肝臓の別の場所に次のがんが発生してくることがあります。ですから、治療が終わったあとも主治医の指示に従って定期的なフォローアップを受けるようにしてください。

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