当院の診療(診断・治療)
小児において、成人によくみられる胃がん、大腸がん、肺がんといったがんはほとんどみられません。一方で、白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、神経芽腫、肺芽腫、腎芽腫、といった成人ではあまりみかけない、あるいは小児特有のがんが多くみられます。特に白血病は小児がん全体の40%を占めます。成人がんは、多くの病院で治療が行われていますが、小児がんを診断・治療できる病院は大学病院やこども病院など一部の病院に限られます。成人の2人に1人は生涯のうちに何らかのがんを経験すると言われていますが、小児がんは約1万人に1人の子供しか発症しない珍しい病気ということもあり、診療できる施設が少ないのです。当院では、一人でも多くの小児がん患者さんが、元気になって退院できるよう、看護師、保育士、リハビリテーションスタッフ、薬剤師、歯科衛生士など医師以外のスタッフも共同で診療を行っており、病棟内はいつも子供たちの笑顔であふれています。
血液検査では、白血病細胞など異常な細胞がいないか、また腫瘍マーカーといって、その腫瘍(がん)が特異的に血液中に分泌している物質を調べます。CTやMRI、PET―CT、シンチグラフィという画像検査を駆使して、がんがどこにあるのかを突き止め、小児外科や脳神経外科など外科系の医師とどのように手術するのかを相談します。白血病を疑うときは骨髄検査といって骨の中の「血液の工場」を調べたりもします。いずれの検査も麻酔や鎮静を行って苦痛がないよう配慮しています。
がん細胞を顕微鏡で確認する病理検査を経て治療にうつります。小児がんの多くは、化学療法つまり抗がん剤の治療をしますが、吐き気止めなど副作用を大きく軽減できる方法がありますので、それらを有効に利用します。病気によっては化学療法に加えて、手術や放射線治療も併用します。難治性の白血病などに対しては、骨髄移植などの造血幹細胞移植も行っています。
神経芽腫は小児外科で扱う悪性固形腫瘍の中で最も多いがんであり、神経堤由来組織(副腎、交感神経幹)から発生します。乳児期に無症状で偶然に見つかることが多く、1才以下では予後が良好ですが、1才以上では転移がみられる進行例が多いです。症状は腹部腫瘤が主で、発熱、体重減少、食欲不振、貧血などを認めます。転移により皮下結節、骨痛、眼球突出・眼周囲出血斑(眼窩周囲の骨転移)、下肢麻痺・直腸膀胱障害(脊椎管内に進展したダンベル型)、ホルネル症候群(頸部原発交感神経障害)、オプソクルーヌス・ミオクローヌス症候群(小脳性運動失調、不随意運動)などを認めることもあります。腫瘍マーカーは、以前はマススクリーニング検査として尿中VMA、HVAを測定していましたが、現在は血中NSE、フェリチン、LDHの上昇を参考にしています。画像検査として、腹部超音波検査、CT、MRI(内部の顆粒状石灰化)で評価を行います。また転移巣の評価としてMIBGシンチ、MDP骨シンチを行っています。治療は迅速な生検、組織診断後に化学療法を行います。中~高リスク群では骨髄・幹細胞移植を伴う大量化学療法後に、局所の外科的切除を行います。MYCN遺伝子増幅例が予後不良である一方、無治療経過観察のみで自然退縮するものもあり、その病態は極めて多様です。3年生存率は低リスク群90-100%、中リスク群75-98%、高リスク群20-60%となっています。
小児がんに関する解説
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