当院の診療(診断・治療)
本邦での2018年の統計では、皮膚がんの罹患者数は24,079人で近年増加傾向にあります。皮膚がんは一般的に高齢者に多いですが、2019年死亡者数は1,702人と他の悪性腫瘍に比較すると少なく、早期発見・治療が可能です。皮膚がんには様々な種類の腫瘍がありますが、日光角化症・ボーエン病(上皮内がん)、基底細胞がん、有棘細胞がんなどの上皮系のがんの頻度が高く、次いで皮膚がんの中では転移を来たしやすい悪性黒色腫(メラノーマ)となっています。乳房外パジェット病や皮膚悪性リンパ腫は、湿疹や白癬などの良性疾患との区別が難しい例もあり注意が必要です。
多くの皮膚がんでは外科的治療が治療の第一選択で、手術だけで完治する場合も多く、補助的な放射線治療や化学療法を行うことは少ないです。しかしながら、進行期メラノーマでは、近年分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療が行われています。皮膚がんは種類が多く、診断により治療方針が異なるため、まずは正確に診断を行うことが大切です。ダーモスコープという特殊な拡大鏡による検査は患者さんに侵襲性の少ない検査法で、基底細胞がんやメラノーマの診断に極めて有用であることがわかっています。皮膚がんが疑われる場合には、最終的には病変の一部を採取(皮膚生検)して、病理診断を行います。メラノーマなどで腫瘍が深くまで浸潤している場合には、全身に病変が拡大していないかをCTあるいはPET-CTを用いて検査します。また、リンパ節の転移の有無を確認するため、センチネルリンパ節生検という手法で検査を行います。近年、メラノーマの原因を引き起こす遺伝子の存在が明らかになってきており、異常がみられる場合には分子標的薬という薬で治療を行うことができます。また、進行したメラノーマでは自分の免疫力を強化して腫瘍を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬という薬剤を用いることもできます。しかしながら、抗がん剤には様々な副作用が出現する可能性もあるため、担当医と相談の上、注意深く治療を行なって行くことが大切です。
皮膚悪性腫瘍の治療は皮膚科と形成外科の協力のもとに行われます。皮膚悪性腫瘍の基本的な治療は原発巣を外科的に切除することです。腫瘍を周囲の正常な部分を含めるようにして確実に切除することが重要です。再発しないためにどの程度正常な部分を含めて腫瘍を切除するかは皮膚悪性腫瘍の種類によって異なります。こうした判断は様々な種類の悪性腫瘍の治療経験のある皮膚科医師および形成外科医師が行います。形成外科は腫瘍切除後にできた傷や組織欠損部位に対する再建手術を担当します。体表面の手術であるため、整容面はもちろん機能面での回復も考慮に入れた再建術を行います。切除範囲が小さければそのまま皮膚を縫合して終了する場合もありますが、切除範囲が大きくなった場合は皮膚移植や脂肪、筋肉を含めた組織移植など、様々な手術方法を駆使して再建術を行います。腫瘍を十分に切除すること、切除した後の傷をなるべく元通りに再建すること、このふたつを確実に両立させることは皮膚悪性腫瘍の外科治療において重要になります。
診療実績
皮膚がんに関する解説
下記のサイトにてご確認ください
独立行政法人国立がんセンターがん対策情報センター