当院の診療(診断・治療)
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。男性にも発生することがあります。乳がんは大きく非浸潤がんと浸潤がんに分けられます。非浸潤がんは、がん細胞が乳管や乳腺小葉にとどまっているがんです。浸潤がんは、乳管や小葉の周囲まで広がっているがんです。さらに乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺、肝臓、脳など)に転移を起こすことがあります。2018年に日本全国で乳がんと診断されたのは約95000人で、おおよそ日本人女性10人に1人が一生のうちに乳がんに罹患することとなります。乳がんの10年生存率は約90%で、比較的予後の良好ながんといえます。早期発見、早期治療により治癒が望めるがんです。
乳がんの検査は、最初に目で見て確認する視診と触って確認する触診、乳房のレントゲン写真であるマンモグラフィおよび超音波検査(エコー)があります。乳がんの可能性が疑われる場合には、病変の細胞や組織を採取して顕微鏡で調べる検査を行い病理診断が確定します。病理診断で乳がんが確定した場合、治療の方針を決めるためにがんの広がりを検査します。CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィ、PET検査などの画像検査を行い、乳がんの進行度(ステージ)を診断します。
乳がんの治療は、乳がんの進行度(ステージ)と乳がんのサブタイプによって決めていきます。遠隔転移をしている場合を除き、手術で乳がんを切除する外科治療が中心です。その他の乳がん治療としてホルモン治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。乳がんの外科治療には乳腺全切除術と乳腺部分切除術(乳房温存治療)があり、乳房内でのがんの広がり、乳がんのサブタイプと患者さんの希望を考慮して決めます。また、手術では腋窩リンパ節をすべてとる(郭清)かどうかを検討します。腋窩リンパ節を郭清すると術後に患側上肢のリンパ浮腫が生じることがあるため、リンパ節に転移が明らかでない場合にはセンチネルリンパ節のみを摘出してリンパ郭清を省略します。乳がんの切除により失われた乳房を取り戻すための手術を乳房再建といいます。乳房再建は乳がん治療の一部であり、腹部や背部からの自家組織移植による再建、シリコンインプラントによる再建、ともに保険診療となっています。再建の時期は、乳がんの切除と同時に行う方法(一次再建)と乳がん切除後に行う方法(二次再建)があります。当院で行っている一次再建は、乳腺切除時と同時に皮膚を伸ばすための組織拡張器を埋入し、6~8ヶ月経過してから2回目の手術で自家組織やインプラントによる再建を行います。二次再建は、当院での切除後の方も、他院で切除後の方にも対応可能です。再建方法については、1回の手術で乳房を再建する方法と、組織拡張機を埋入と乳房再建を2回に分けて行う方法があります。患者さんの希望、年齢、職業、生活習慣、手術の既往、乳がんの部位や切除範囲、反対側の乳房の大きさなどを考慮して選択します。乳輪乳頭を合併切除した場合、乳房再建術後に自家組織による乳輪乳頭再建を行うことが可能です。また、シリコン製人工乳頭も希望に応じて対応します。このように、乳房再建は手術する時期や手術法が様々であるため、術前に形成外科医と納得できるまで相談することが大切です。
乳がんの薬物治療としては、化学療法、ホルモン内分泌治療、分子標的治療薬などがあります。これらの治療は乳がんの進行度とサブタイプによって組み合わせが決まっていきます。その他に、乳がんの治療として放射線治療があります。放射線治療は乳腺部分切除後の温存乳房に放射線を照射して再発を予防します。リンパ節転移や乳房周囲にがんが広がっていた場合も、術後に局所再発を予防する目的で放射線治療を行います。進行がんおよび再発がんに対する治療は近年劇的に進化してきており、患者さんそれぞれの病態と希望にあわせて治療法を選択します。最新の治療ガイドラインおよび臨床試験情報については担当医に遠慮無くお尋ね下さい。
診療実績
乳がんに関する解説」
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