TREATMENT

脳腫瘍

対応可能な診療科

当院の診療(診断・治療)

脳腫瘍は稀な疾患であり、年間発症率は人口10万人あたり3.5人程度で、国内では年間に約2万人に発症します。脳腫瘍は、脳内の細胞や神経、脳を覆う硬膜などから発生する原発性脳腫瘍と、体のがんが脳に転移して発症する転移性脳腫瘍に大別されます。原発性脳腫瘍はさらに良性と悪性に分類され、悪性脳腫瘍は原発性脳腫瘍の約40%を占めます。
 
原発性脳腫瘍はWHO(世界保健機構)分類でグレード1から4に分類されています。良性脳腫瘍のほとんどはグレード1で、代表的なものとして髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫があります。これらの腫瘍の多くは手術により全摘出できれば完治可能です。腫瘍が残存した場合、再発することがあります。悪性脳腫瘍は低悪性度のグレード2から高悪性度のグレード3、4に分類されます。代表的なものに脳内のグリア細胞より発生するグリオーマ(神経膠腫)があります。グリオーマは原発性脳腫瘍の30%程度を占めており、治療方針は手術により最大限摘出後に後療法として放射線療法や化学療法を行います。
 
転移性脳腫瘍は、肺がんや乳がんなどのがん患者の約10%に発症すると言われています。治療としては手術や定位放射線治療、全脳照射に加えて、最近では分子標的治療薬を含む化学療法も挙げられます。
 
脳腫瘍の診断は、CTやMRIといった画像診断が中心となります。CT撮影することにより、腫瘍の位置や腫瘍内部の石灰化や出血、周囲の浮腫について確認することが出来ます。しかしながら、脳腫瘍のタイプを調べるためにはMRI撮影が必要です。MRIにより腫瘍の性状や形、造影効果の有無など調べることにより、ある程度脳腫瘍のタイプを同定することが可能です。また、MRIは手術前後の腫瘍摘出率の評価、放射線治療や化学療法後の治療効果や治療後の再発の有無など確認するために定期的な撮影が必要です。
 
脳腫瘍の内科的治療には、化学療法と放射線療法があります。グリオーマの場合、放射線療法(拡大局所照射)と化学療法(テモゾロミド内服)を術後同時に6週間行います。その後維持療法を通院で続けます。脳悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍は、治療の主体は化学療法になります。脳悪性リンパ腫では地固め療法として放射線療法(全脳照射)が行われますが、最近では高齢者を中心に、白質脳症を防ぐために放射線を減量もしくは回避する場合があります。胚細胞腫瘍は化学療法中に放射線療法を行いますが、高悪性度タイプでは広範囲の照射(全脳全脊髄照射)が必要です。
 
脳腫瘍の病理診断は、手術もしくは生検により採取した腫瘍組織を使用して行われます。病理診断は、治療方針を決定する上で重要です。脳悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍では、手術による腫瘍摘出率が治療成績に影響しません。そのような腫瘍では、診断目的に生検を行います。髄膜腫や下垂体腺腫などの良性腫瘍は、外科的手術のみで通常化学療法は行いません。通常手術では全摘出が目標となりますが、深部や機能的箇所に出来た場合は、機能温存を優先して意図的に残存させることがあります。グリオーマは化学療法や放射線療法が著効しないため、手術により最大限腫瘍を摘出することが目標となります。術後に運動麻痺や言語障害などの合併症を出さないために、ニューロナビゲーションや運動機能モニタリング、覚醒下手術など多くの医療機器や手技を用いたマルチモダリティー手術が主流になっています。

脳腫瘍に関する解説

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