TREATMENT

膵がん

対応可能な診療科

当院の診療(診断・治療)

我が国の2019 年の統計では、膵がんは死亡数:男性18,124 人、女性18,232 人でそれぞれがん死亡全体の8.2%(4位)、11.6%(3位)を占める頻度の高い疾患です。膵がんの種類としては、最も一般的な浸潤性膵管がんが約9割と最も多く、他に神経内分泌腫瘍や腺房細胞がんなどが知られています。膵がん全体の5年生存率は、全病期で8.5%、病期別では、膵臓に限局しているもので42%、局所進行(膵臓外に出ているが、遠隔転移がない)で13%、遠隔転移を認めるもので1.8%と、他のがん種と比較してもきわめて不良です。発症の契機としては、膵頭部にできるがんでは黄疸で発症することがありますが、多くは上腹部痛・背部痛や食欲不振など非特異的なものです。予後の改善のためには、早期発見により外科的治療(手術加療)を行うことが重要ですが、症状が出現した段階で膵臓外に出た進行がんであることが多いことも予後不良である要因の一つとなっています。膵がんのリスクとしては、糖尿病や喫煙といった他のがんと共通のものの他に、慢性膵炎や、膵嚢胞、なかでも膵管内粘液腫瘍(IPMN)が知られています。近年、家族性の素因がある膵がんがあることが知られており、切除不能と判断された膵がんの数パーセント程度を占める可能性が指摘されています。
 
腹部症状があり受診された方に対して、腹部超音波検査、血液検査を行い、膵がんの可能性を考える場合には、さらにCTやMRI検査を施行します。CT検査においては、腎機能などをみて可能であれば造影剤を用いた検査(ダイナミックCT)を施行します。続いて、超音波内視鏡検査(EUS検査)や内視鏡的逆行性膵管造影検査(ERCP検査)を行います。必要時に病変を疑う部位に対して超音波内視鏡下に経胃的もしくは経十二指腸的に穿刺を行い、病理組織診断・細胞診を行います。膵嚢胞性疾患を基礎とする場合や微小膵がんなど超音波内視鏡検査による組織診が適さない場合、ERCP検査により膵液を採取して悪性細胞の有無の判断を行います。膵がんと診断された場合、画像検査による正確な評価を行い①切除可能膵がん(十分に切除可能な状態)、②切除可能境界膵がん(切除可能であるが、顕微鏡レベルでがんを取り残す可能性が高い状態)、③切除不能膵がんに分類します。
 
膵がんに対して根治のためには外科的切除が不可欠になります。その対象は①および②でステージ(UICC)Ⅰ~Ⅲ(一部)に相当します。現在、①の患者さんに手術前後に抗がん剤治療を行うことが標準治療になっています。②の患者さんに対しても病変の制御目的にほぼ全例に術前に強力な化学療法をしてから手術を行っています。がんの発生部位によって術式は異なり、膵頭部側であれば亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を膵体尾部であれば膵体尾部切除術を行います。近年では腹腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術が膵臓手術でも行われるようになり、当院でも膵体尾部の膵がんに対しては低侵襲手術を行っています。また、周囲の主用血管に浸潤し切除が困難な局所で進行した膵がんでも、薬物治療が奏功して取り残すことなく切除可能であれば、積極的に手術を行っています。一連の治療終了後は定期的に再発の有無をチェックし、再発した場合は切除不能時と同様の治療を行います。
 
外科的加療が難しい場合、内科的加療を検討します。膵がんの内科的加療は化学療法・放射線療法がありますが、放射線療法の有効性のエビデンスは少なく、化学療法が主体となります。近年、化学療法は進歩してきており、十分ではないものの少しずつ予後の延長ができるようになっています。遺伝子検査に基づいた個別化治療はまだほとんど行われていませんが、遺伝性の素因がある膵がんの一部(生殖細胞系列におけるBRCA遺伝子変異を認める場合)では、新たにオラパリブが保険適応となるなど今後の進歩が期待されます。一方、近年多くのがん種で用いられるようになってきている免疫チェックポイント阻害剤については、現状ではごく一部を除き膵がんにおける適応はありません。

診療実績

膵がんに関する解説

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