当院の診療(診断・治療)
我が国の2019 年の統計では、胆道がんは死亡数:男性9,341人、女性8,583 人でそれぞれがん死亡全体の4.2%、5.4%を占めます。胆管がんは発生部位によって肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんに分類されます。胆道がんの5年生存率は、全病期で20%程度、進行度別では、限局しているもので61%、領域に及ぶもので28.5%、遠隔転移を認めるもので2.9%と、膵がんに次いで予後不良ながん種の一つです。発症の契機としては、胆道を占拠する腫瘍による胆道閉塞が起点となって、肝胆道系酵素の上昇を伴う血液検査異常や黄疸が多く、腹腔内に播種した場合は腹痛や腹水貯留で発症する場合もあります。リスク因子としては、糖尿病や喫煙といった他の癌においても認める共通のものの他に、肥満・高脂血症・高脂肪食の摂取が上げられ食生活に関するリスク因子が知られています。他に特有なリスクとして、膵胆管合流異常・原発性硬化性胆管炎・肝内結石・ジクロロメタンをはじめとする特定の薬剤の長期吸入歴が知られています。早期発見のためには、特に胆嚢がんにおいて、検診などにおける腹部超音波検査の有用性が指摘されています。
胆道がんが疑われる場合に、腹部超音波検査、血液検査を行い、CT検査を施行します。CT検査においては、可能であれば造影剤を用いた検査を施行します。MRI検査や超音波内視鏡検査(EUS検査)を行うこともあります。これらの検査で胆道がんが強く疑われる場合、内視鏡的逆行性膵管造影検査(ERCP検査)を行います。必要時に病変を疑う部位に対して生検を行い、病理組織診断・細胞診により病理組織学的な診断と病変がどのあたりまで広がっているかの範囲診断を行います。肝内胆管がんの場合は、病理組織診断を行わず、画像診断のみとする場合があります。診断が確定した場合、外科的加療(手術療法)が可能であるかどうかを検討します。
胆道がんは、その発生部位により手術の方法が大きく変わることが特徴です。肝臓の出口付近にできた場合(肝門部胆管がん)は、肝臓の外の胆管を切除し、さらにがんが胆管に沿って肝内胆管にも拡がっている場合が多いため、肝臓の左右どちらか半分を一緒に切除します。がんの中心が右寄りであれば右半分の肝臓を、左寄りであれば左半分の肝臓を一緒に切除します。がんが膵臓の近くの胆管にできた場合(遠位胆管がん)あるいは十二指腸の出口にできた場合(十二指腸乳頭部がん)は、胆管に加え、膵臓の一部(膵頭部)と十二指腸も切除します。さらに、数は少ないですが、がんが胆管の広範囲に広がっている場合は、肝臓と膵臓を両方とる手術が必要になる場合もあります。胆管がんの手術は体に大きな負担がかかるため、術前の準備が必要になることがあります。肝臓を大量に切除する場合は、切除する側の肝臓の血管を詰め(門脈塞栓)残る側の肝臓の肥大を促します。また胆管が閉塞して黄疸の症状がある場合は、内視鏡を用いて胆管に管を入れる処置(胆管ステント)をします。これらの処置を行って準備を行い、適切な手術を行ったとしても、術後には肝不全や胆汁瘻、膵液瘻など合併症発生の可能性があり、負担が大きな治療となりますが、手術で胆管がんを取り除くことができれば、根治の可能性(がんが治る可能性のこと)が高くなります。
がんの進行度や体の状態により手術が不可能と判断される場合は、全身化学療法(抗がん剤)を行います。治療に際して、閉塞している胆道のドレナージをできるだけ行うことが望ましく、特に胆管炎を併発している場合は胆管炎の原因となっている領域をドレナージすることが必要となります。内視鏡的もしくは経皮的に行いますが、デバイスと手技の進歩により、迅速かつ切れ目のないドレナージが可能となりつつあります。化学療法は近年進歩してきており、腫瘍部のFGFR融合遺伝子を認める場合に、2021年に承認されたFGFR阻害剤であるペニガチニブが、特に肝内胆管がんの治療において個別化治療として期待されています。一方、免疫チェックポイント阻害剤については、現状では一部を除き適応はまだありません。
診療実績
胆道がんに関する解説
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