当院の診療(診断・治療)
我が国の2019年の統計では年間に11,619人(男性9,571人、女性2,048人)の方が食道がんで死亡しています。人口あたりの罹患数(1年間で新たに診断された人)は10万人あたり20.1人(男性34.3人、女性6.7人)と男性に多い病気です。食道がんは飲酒と喫煙がリスクになることがわかっています。症状が出てから発見される方は、進行したステージでみつかることも多く、飲酒・喫煙習慣がある方に関しては内視鏡検診の受診をお勧めします。最も良いのは食道がんにならないことですので、禁酒(節酒)・禁煙が望まれます。
食道がんにおいては早期で発見された場合は内視鏡にて治療を行います。進行食道がんの場合は外科手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて治療を行います。それぞれの治療方針は、定期的に消化器内科・消化器外科・放射線治療科でカンファレンスを行い、最良の治療を議論し決定しています。適切な治療のためには正確な内視鏡診断が不可欠です。当院では拡大内視鏡検査、超音波内視鏡検査など最新の内視鏡検査を行うことが可能です。また内視鏡検査に加えて造影CT、PET-CTなどの画像検査を行い、病気の進行度を決定します。ステージ(病期)I~IIIが外科治療(手術)の適応です。また、ステージII、IIIに対しては基本的に手術前に抗癌剤治療を行います。ステージIVでは手術を行うことはなく、抗癌剤治療や放射線治療を行います。
手術は身体から癌を切り取る方法で、食道がんに対する最も一般的な治療方法です。手術では、がんを含めた食道と胃の一部を切除し、同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します。切除後には食物の通る新しい道をつくり直します。食道がんの手術は、頚部・胸部・腹部の3領域にわたった手術が必要で、消化器外科の中でも最も大きな手術の一つです。そこで近年、手術方法として胸腔鏡および腹腔鏡を用い、傷を小さくし内臓を大気に露出させないようにしてがんを切除する低侵襲手術が全国で広まっています。当院でも2009年より胸腔鏡下食道切除術を導入、また2020年よりロボット手術の導入を行い手術の低侵襲化を進めています。
内視鏡の技術や機器の発展に伴い、早期の食道がんであれば多くの症例で内視鏡治療(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術)が可能です。ESDは内視鏡で行う手術であり体の負担が少ないです。早期の食道がんではESDのみで治癒が期待できます。進行食道がんに対しては外科治療が第一選択となりますが、全身状態によっては内科的に化学療法と放射線療法を組み合わせた治療を行うことがあります。その場合は放射線治療科の先生と一緒に治療にあたります。化学療法では近年話題になっている免疫チェックポイント阻害薬が使用可能となり、食道がんの治療も様々な選択肢が増えてきています。当院の特色として、放射線療法または化学放射線療法を行った後に局所に遺残または再発した食道がんに対して、光線力学的療法(PDT)を積極的に行っています。放射線治療が行われた後の再発・遺残食道がんという条件がつきますが、PDTは体の負担が従来の外科治療に比べて少なく、効果も期待できる治療です。その他、最新の情報に関しては外来担当医に直接お尋ね下さい。
診療実績
食道がんに関する解説
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