当院の診療(診断・治療)
我が国の2018年の統計では、肺がんは死亡数:男性52401人、女性21927人でそれぞれがん死亡全体の24%、14%を占める頻度の高い疾患です。肺がんはその性質上、小細胞癌、非小細胞癌に大別され、後者はさらに扁平上皮癌、非扁平上皮癌に分類されます。小細胞癌においてⅠ期では手術+術後化学療法、Ⅱ期~Ⅲ期では放射線化学療法、Ⅳ期では殺細胞性抗がん剤による化学療法または複合がん免疫療法を行います。非小細胞癌においてⅠ-Ⅱ期では手術(および適応例では術後補助化学療法)を行います。Ⅰ期のうち手術が困難な場合は根治的な定位放射線治療を行います。Ⅲ期ではその症例に応じて手術+術後補助化学療法、放射線治療+化学療法後の手術、放射線治療+化学療法後のがん免疫療法などを行います。Ⅳ期では殺細胞性抗癌剤による化学療法、ドライバー遺伝子変異に基づいた分子標的治療、がん免疫療法、複合がん免疫療法などを行っています。それぞれの治療方針は、毎週1回呼吸器内科・呼吸器外科・放射線治療科でカンファレンスを行い、最良の治療を議論し決定しています。
早期の原発性肺がんに対しては手術による治療が最も推奨されます。術式やアプローチは病状により異なるため、カンファレンスで協議し、患者さんと相談し方針を決定します。血管気管支形成など高い技術を要する肺門部肺癌の手術も積極的に行います。リンパ節転移を伴う局所進行肺がんでは、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科と協議し集学的治療を行います。切除可能と判断されれば、術前化学放射線療法後に手術を行います。近年では、分子標的治療や免疫療法など薬物療法の進歩や放射線治療の技術革新もあり、切除不能な肺癌の患者さんも、そうした治療で切除可能になることもあります。そのような場合も関連各科と協議し、適応と判断されれば手術を行います。また、薬物療法のための診断的手術も行います。呼吸器外科では、肺がんに対するロボット支援胸腔鏡下手術を導入し、全国トップクラスの診療実績を誇っています。ロボット手術は、3D視野下に自在に動く鉗子で手振れの無い操作が可能で、精緻なリンパ節郭清や複雑区域切除などの手技も低侵襲手術で行えます。肺がんに対する低侵襲手術から拡大手術まで、最高の技術とチーム力で診療にあたっています。
適切な治療のためには正確な病理診断が不可欠となります。当院ではEBUS-GS、EBUS-UT、EBUS-TBNA、仮想内視鏡によるナビゲーション、局所麻酔下胸腔鏡検査など最新の呼吸器内視鏡検査を行うことが可能であり、病理診断に必要な生検を積極的に実施しています。現在は進行したⅣ期非小細胞肺癌の1次治療前に病理診断のみならず、ドライバー遺伝子(がんゲノム)診断を実施し、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、METなどの遺伝子異常が検出された場合に、それぞれの遺伝子異常に応じた最適な分子標的治療を提供する、いわゆる「プレシジョン・メディシン(精密医療)」を可能な限り実施しています。近年進行肺癌に対する標準治療は、分子標的薬やがん免疫療法の進歩もあり劇的に変化してきています。当科においては、すでに保険適応となった新しい分子標的治療やがん免疫療法、複合がん免疫療法のみならず、新規の未承認薬の治験も数多く実施しています。最新の臨床試験情報に関しては外来担当医に直接お尋ね下さい。
診療実績
肺がんに関する解説
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